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「1948年戦後引揚者の掘立長屋」

築70年を超える掘立て長屋の再生である。
資材不足の時代になんとか造られた建築が、残っていることに感動を覚えた。戦後の日本の経済発展を支えてくださった先人たちの逞しい生き様が、建築から伝わってくる。そこで、構造的には補強しつつ、金物や耐力壁を配置し、華奢な柱や梁を建築遺産として見える化した形でのデザインを目指した。既存不適格であり図面も何もない建築のため、構造的な安全性の確保に時間が要した。
ビフォーは住宅であったが、街の成長により商業施設としてのポテンシャルが高まっているためにテナントとしての再生を目指した。外壁の色は地名である「六本松」をオマージュ、松の「緑」をアクセントとし、リノベーションに際して「パインハウス」と名付けた。コロナ禍でテナント入居者探しは苦戦したが、2022年8月からは一階にセレクトショップ、2階にカフェがオープンした。

場所
福岡市中央区六本松1丁目
用途
オフィス・テナント
構造
木造2階建
面積
119,24㎡
住所
福岡市中央区
リノベーション年月日
2021年10月
  • 古屋付き定期借権というバトンを引き継いだ。解体工事の際に壁内より「1948/3/18」英字新聞が出現した!推測するに、建築年月日は不明であるが、太平洋戦争後に建てられた掘立小屋が増改築され続け、現在の建物となっていると思われる。2000年代から本エリア(福岡市中央区六本松)は大規模な再開発が行われ、大型商業施設や集合住宅が立ち並ぶ人気エリアとなってきたが、この敷地だけ昭和から時が止まったような古いまちなみがひっそりと残っている。

  • 本建物の立地する『福岡縣護國神社』の周辺は第二次世界大戦後、引揚者の住宅地として国と護国神社が土地を提供した地域といわれている。当時は掘建て小屋や長屋が立ち並んでいたようである。この建物は、そんな時代的背景のある六本松1丁目というエリアに立地しており、護国神社が所有する土地に50年の定期借地という形態でリノベーションを行なった。

  • 私はこの建物が可愛くて仕方がない。築70以上の戦後引揚者の掘立長屋が、定期借地として、建築の延命に関われたことに感謝し、次なる50年で、この建物が、街とどう絡んで、どんな文化を残せていけるのか、古屋付き定期借権というバトンを引き継いだ責任を全うしたい。50年後、生きてるとしたら私は100歳、長生き比べである(笑)